一年間に110万円までの非課税枠をうまく利用して、「小さく、長く」贈与することで相続財産を減らす方法です。
贈与が成立するためには両社の合意が条件です。そのため、単に子供名義の口座に振り込めばいいというわけではありません。また、実際に親が通帳を管理しており、子供が使える状態でなければ、親の資産とみなされる可能性があります。合意は口頭でも有効ですが、贈与契約書を作成することにより贈与事実の強力な証明になります。
※連年贈与には気を付けて
連年贈与とは、たとえば毎年110万円ずつ20年にわたって贈与をした場合に、最初から2,200万円の定期預金を贈与したとみなされるものです。この連年贈与を防止するためには、毎年異なる金額、異なる日付で贈与契約書を作成したうえで贈与を行うなどの注意が必要です。
短期間で多く贈与したい方は、暦年贈与を310万円以内で行うと効率的です。310万円以内であれば、税率は10%となります。そのため310万円で贈与した場合は20万円の贈与税で済むうえ、比較的早く、多くの金額を贈与することができます。
土地は他人に貸し出すことで相続税評価額が下がります
土地を他人に貸すと借地権が生じますので、自分が所有する土地であっても自由に処分することはできません。このことを考慮して、自宅が建つ土地に比べて相続税評価額は低くなるように制度化されています。
・建物は評価額が低い
預金で一億円持っていれば、相続税の計算では1億円の評価です。しかし、建物は固定資産税評価額で評価されます。新築の購入金額の4~5割程度です。リフォームをしても同様の効果があります。預金に余裕があり相続が心配な方は、親と話し合って家を新築したりリフォームすることも良い方法です。親にとっては新しい家に住め、子供にとっては相続税評価額を低くでき、両者が得する方法です。
業承継 しておいた方が良いこと~同族に後継者がいる場合~
①自社株評価を引き下げること
オーナー経営者が保有する自社株を後継者に引き継ぐ場合は、贈与税等に対する納税資金を準備する必要がありあす。会社の業績が良ければ当然自社株の評価額は上がりますが、利益が出ていない場合でも評価額が高額になる場合があります。早めに自社株対策を始めることが、円滑な事業承継の第一歩となります。
②相続人間における相続争いの事前防止策
相続争いの予兆が少しでも存在するのであれば、会社法で規定される種類株の発行等により、各承継者の事情に応じた引継が可能になることがあります。
③事業承継税制の活用
(1)非上株式に係る贈与税の納税猶予制度
後継者が、経営承継円滑化法に基づく経済産業大臣の認定を受けた非上場会社を経営していた親族から、贈与により会社の非上場株式を3分の2に達するまで取得した場合は、一定の要件を満たすことを条件に、贈与者が死亡する日まで贈与税の納税が猶予されます。
(2)非上場株式に係る相続税の納税猶予制度
相続開始前から保有していた非上場の自社株を、後継者が経営者である被相続人から相続した場合は、一定の要件を満たすことを条件に、その自社株の3分の2に達する前の部分にかかる課税価格の80%に対応する相続税が猶予されます。
・養子縁組という方法
日本で行われる養子縁組の割合は10%程度といわれます。税法上養子は実子がいれば1人、実子がいなければ2人までを計算に入れることができます。基礎控除の額や保険金の非課税枠の増額、また、1人あたりの法定相続分が減少するなど、相続人の数が増えることは相続税を減らす効果があります。相続税対策で養子縁組、というのは抵抗があるかもしれませんが、検討する価値はあます。
遺言書はなぜ必要?
人はそれぞれ、個別に特別な人間関係を持っているものです。たとえば、リタイアした後に親族よりも親身に世話をしてくれた人がいる、子供の中に特別に多くの財産を残したい人がいる、自分の会社を継がせたい特定の人がいる等々、事情は千差万別です。
法律通りの決まりきったパターンで、納得できる相続など皆無なのです。このようなお悩みを起こさないためにも遺言書が必要となります。
どういう場合に遺言書を作っておいた方がいいですか?
①妻に全財産を遺したい
②お世話になった方や老後の世話をしてくれた嫁に財産を遺したい
③自分の絵を美術館に寄贈したい
④婚姻届を出していないが、連れ合いに財産を遺したい
⑤相続人の仲が悪く、遺産分割協議がスムーズに進まないことが想定される
⑥身障者の子供がおり、法定相続分よりさらに多くの財産を遺したいと考えている
⑦会社を後継者にスムーズに承継させたい
遺言書には三つの形式があります。
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの方式があります。
いずれの方式で作成されるかは、それぞれのメリット・デメリットを十分に把握して、決めることが重要です。どれにしたらいいのか迷われる方は、遺言書が発見されない恐れや、無効となる恐れがないという点で「公正証書遺言」で作成すると安全でしょう。